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RFIDビギナーズガイド



RFIDの基本を学びたい方は、このビギナーズガイドをご活用ください。RFIDは、専門的な用語や技術が多いため、苦手に感じる方が少なくありません。そのためこのガイドでは、RFIDテクノロジーの基本を丁寧に解説し、RFID活用に必要な知識を提供しています。

RFIDビギナーズガイドの目次





はじめに

RFID(Radio-Frequency Identification)テクノロジーは、電波を介して通信し、無線でモノを識別・追跡できることから、多くのデータを瞬時に取得することができます。そのため、RFIDで取得できるデータを活用して、プロセスを簡素化・自動化したり、また新しい価値を創出するため、様々な産業で広く活用されています。

RFIDの概念は何十年も前から存在していましたが、技術の大幅な向上とコストの低下により、近年広く採用されるようになりました。このガイドでは、RFIDの歴史、種類、仕組みなど、RFIDテクノロジーの概要に加えて、RFIDの様々な応用例、利点といくつかの制約についても紹介します。またITエンジニア、企業経営者、あるいはRFIDテクノロジーに関心のある方など、RFIDについて学びたいと考えているすべての方を対象としているため、テクノロジーの包括的な概要と、様々な業界を変革する可能性を知ることができます。





RFIDテクノロジーとは


RFIDテクノロジーは、電波を活用した無線による自動識別技術のことです。RFIDタグをモノに貼り付けることでモノを識別・追跡できるようにします。RFIDタグにはマイクロチップとアンテナが内蔵されており、リーダの無線信号によって一意の識別子をリーダ・デバイスに返信します。

これによって、非接触かつ視覚的に遮蔽された状態でも、対象のモノを識別・追跡することが可能となり、結果としてサプライチェーンの管理、小売、物流、資産の管理など、多くのビジネスで活用することができます。またRFIDをIoTソリューションと組み合わせることで、大量のデータを収集・分析し、ビジネスプロセスや意思決定の最適化・改善をすることも可能です。





RFIDの歴史

RFIDテクノロジーは、20世紀の初頭にモノを識別・追跡するために電波を使い始めたことから始まりました。RFIDテクノロジーが近代的な形をとり始めたのは、1970年代になってからです。

1973年、RFIDシステムに関する最初の特許がMario W. Cardulloによって取得されました。特許には、電波を活用して個品を自動的に識別・追跡するシステムが含まれており、これはRFID時代の幕開けと言えるでしょう。

80年代から90年代にかけ、RFIDの進化はさらに盛んになり、パッシブRFIDやアクティブRFIDなど、さまざまなタイプのRFIDシステムが開発されました。またこの時期、RFIDは主に軍事・産業分野において、サプライチェーン管理や在庫の把握、トレーサビリティといった用途で活用されていました。

その後2000年代に入り、テクノロジーの進化に伴い価格も手頃になったため、小売、医療、物流をはじめとする多くの業界で採用が進みました。その後もテクノロジーは成長し続け、RFIDリーダー、アンテナ、タグもさらなる進化を遂げました。

現在、RFIDは近距離無線通信(NFC)やモノのインターネット(IoT)などの新たなアプリケーションやイノベーションへ寄与しています。また多くの専門家が、RFIDは近い将来私たちの生活においてさらに大きな役割を果たすようになるだろうと予測しています。





RFID活用の主な利点

RFIDテクノロジーは、企業や組織が商品や資産を管理・追跡する方法に革命をもたらし、また以下を代表とする数多くのメリットをもたらしました。

  • 効率性の向上:リーダーとタグ間の高速かつ大量のデータ交換を実現します。それにより、在庫管理やサプライチェーン管理、資産追跡などの様々なアプリケーションにおいて、作業効率と精度の向上を実現します。
  • 可視性の向上:効率的にモノのデータ取得を実現することで、より高い頻度と精度で対象のデータを入手することが可能になります。このデータを活用して商品や資産の動きを把握し、可視性を高めることで、組織はより精度の高い、かつより多くの情報に基づいた意思決定が可能になり、リアルタイムの状況の変化に迅速に対応することができるようになります。
  • コストの最適化:プロセスを自動化・効率化して手作業を減らすこと、また取得されたデータを用いてより柔軟に計画・実行を行うことで、コストを最適化し、収益を改善することが可能です。具体的には、在庫の無駄を減らす、資産の稼働率を向上させる、廃棄を減らすといった応用を実施することで、いずれも大幅なコスト削減に繋げることができます。 
  • セキュリティの向上:特定エリアへのアクセス制御や、モノの持ち出しを把握することで、安全性の担保や盗難・紛失の管理など、セキュリティを強化することができます。
  • 消費者エンゲージメントの向上:RFIDを用いたセルフレジに代表される新たな購買体験を実現できます。それだけに留まらず、モノの所在・来歴データをリアルタイムで活用することで、パーソナライズされたリアルタイムのレコメンデーションや、より正確で在庫データに裏打ちされた商品情報の提供、商品の位置情報を基にしたプロモーションといった、消費者にとってさらに魅力的なショッピング体験を実現することで、消費者エンゲージメントの向上を期待できます。

RFIDテクノロジーは、さまざまな業界で利点を発揮します。RFIDは、デジタル上で固有のコード(デジタルツイン)を使用することで、物理的な世界とデジタルの世界を繋ぎます。自動化された非直視型の読み取りによって、RFIDは箱を開けることなく、中にある個品の高速な把握と追跡を可能にします。さらに、コーディングやパスワードで高度なセキュリティー機能を活用すれば、データの安全も確保することもできます。

またRFIDを活用することで、流通効率や廃棄量を改善し、企業のサスティナビリティを向上させることができます。コンプライアンスの一機能としてタグに固有のIDを付与する一方、ブランディングの観点からタグを消費者から見えないように取り付けることも可能です。さらにRFIDの持つユニークIDに紐づけて、リサイクルプロセスに関するあらゆるデータを記録することで、サステナビリティ実現の面でより広く活用することも可能です。





RFIDの主要市場と応用分野


RFIDが変化をもたらしている主な市場と応用分野を紹介します。迅速で正確な識別と追跡が可能なことから、RFIDテクノロジーは様々な産業で広く活用されています。RFIDテクノロジーの最も一般的なアプリケーションをご紹介します。

  • 小売業
    RFIDテクノロジーは、小売業における在庫管理に革命をもたらしました。RFIDタグを個々の商品に取り付けることで、小売企業は過去にないレベルで在庫を正確に把握することができ、また需要の変化に対し迅速かつ柔軟に対応することが可能になりました。それにより機会損失や盗難の減少、顧客のショッピング体験の向上を実現しています。

    ファーストリテイリングは、米国でも称賛されたセルフレジをはじめ、工場からレジに至るまでのサプライチェーンと製品ライフサイクルの効率化に取り組んできました。同社の革新的なアプローチは「ユニクロとAvery DennisonがRFIDを使ってイノベーションを起こす」をご一読ください。
  • 物流
    RFIDは、物流センター間における商品移動の追跡や、在庫の正確性の向上、出荷貨物の把握による積載率の向上など、サプライチェーンにおける物流プロセスの最適化に広く応用されています。またRFIDを介して荷物に関するデータをリアルタイムに取得、それらのデータを活用することで物流企業は需要の変化に迅速かつ柔軟に対応し、より良い顧客サービスを提供し、市場での競争力強化に繋げています。

    日本独自の問題である「物流の2024年問題」まではあと1年を切っています。「荷物量は増加、ドライバー数が足りない」という課題に、物流業界はどのように対応するべきか。そして消費者への影響は──。Avery Dennisonの三井朱音が聞き手となり、物流の専門家として、アカデミアから井村直人氏(東京大学先端科学技術研究センター 先端物流科学寄付研究部門 特任研究員)、産業界から野田和伸氏(元アクセンチュア)からお話を聞いたForbes Japanの対談記事はこちらからお読みいただけます。
  • 化粧品
    店外受け取りやバーチャルストアなど、化粧品小売業界における販売チャネルは多様化しています。 化粧品メーカーは、RFIDを活用することで、商品の流通経路や真正性を担保し、チャネルに関係なく、ブランドの価値を守りながら、消費者が安全かつ効率的に製品と接することができる環境を構築することができます。

    美容業界のイノベーションを発信するメディア「BeautyTech.jp」では「商品読み取り自動認識技術「RFID」×化粧品業界の潜在力と未来」という記事の中でIoTの原点となったRFIDがどのようにして化粧品業界に貢献できるのか、L'OrealのGrab-and-Go型のポップアップストアやブラジルのコスメブランドBoticarioのゴーストストック (システム在庫にはあるが実際は在庫がないため機会損失を生み出している) 対策や在庫精度の向上を紹介しています。
  • 食品
    原産地からスーパーの店頭に至るまでのトレーサビリティーを確保することができます。それにより、食品の安全性の担保と価値の訴求、FSMAなどの行政からの要求への対応、また、在庫の見える化と廃棄の削減にRFIDを活用しています。またコールドチェーンの温度監視にも利用され、食の安全に貢献しています。

    米外食大手のChipotle Mexican Grillでは、食品ロス&トレーサビリティー(生産履歴の追跡)分野でRFIDを活用しています。同社はRFIDの導入により、在庫システムの追跡機能を強化し、在庫を見える化することによって、回転期間の改善、ミスの削減につなげています。さらに、賞味期限が可視化され、問題発生時のアカウンタビリティーが高まることで、食品ロスを削減できるとしています。
  • ヘルスケア
    RFIDテクノロジーは安全性の向上や投薬ミスの削減に活用されています。RFIDタグを医療機器に取り付けることで、迅速かつ正確な追跡が可能になり、医療サービスの提供が合理化されます。またRFIDを搭載したリストバンドを使用することで患者を識別し、医療施設内での患者の動きを把握することも可能になります。
  • 製造業
    製造業においてRFIDテクノロジーは、生産プロセスの最適化や在庫の追跡、設備監視に欠かせないツールになっています。RFIDタグを部品や製品に取り付けることで、生産工程を見える化し、追跡可能にすることで、エラーのリスクを減らし、効率とパフォーマンスを向上させることができます。
  • 自動車
    RFIDテクノロジーは、自動車の生産において、部品のトレーサビリティや、プロセスオートメーションにおける検知、可視化を実現し、製品の認証、ブランド保護、業務効率の改善など、数多くの課題のソリューションです。さらに、RFID は車両に関するミスの検出や、問題のある部品の追跡にも役立ち、安全性と品質を向上することにも活用されています。
  • 製品認証
    RFIDタグを製品や包装に取り付けることで、個々の製品に固有のIDを付与します。そこで付与したIDと同一のIDをQRコードにも印刷し、同じように商品や包装に取り付けることで、スマートフォンなどでもスキャンができるようになり、誰もが自分の手で、製品の原産地や製造日、バッチ番号といった商品情報にアクセスし、真正性を確認できるようになります。
  • 在庫管理
    RFIDは、商品や部品の過剰在庫や過小在庫を防ぐ在庫管理の分野でも広く活用されています。RFIDタグを商品に取り付けることで、企業は在庫レベルを正確に把握し、需要の変化に柔軟に対応できるようになります。さらにサプライチェーン上の細かい粒度かつ頻度でデータを取得することで、商品レベルでのCO2の排出量の算出に寄与したり、在庫の消費期限を正しく管理し、品質の保証と廃棄ロスの削減にも貢献します。
  • サプライチェーンマネジメント
    コンテナ、パレット、その他の包装にRFIDタグを取り付けることにより、サプライチェーンの可視性と効率を大幅に向上させます。同時に企業はサプライチェーンを行き来する商品の動きを追跡することが可能になります。

    過剰生産に伴う無駄はサプライチェーンの危機を招き、在庫の8%近くが腐敗または廃棄されるため、年間利益の3.6%にあたる損失となって企業に重くのしかかっています。この損失は、全世界で1,630億ドル相当の在庫に相当します。

    Avery Dennisonの最新レポート「失われた1000億ドル:サプライチェーン廃棄物の本当のコスト」は、世界300社以上の企業と7500人以上の消費者を対象に、サプライチェーンの現状と廃棄物の問題に焦点をあてた調査レポートです。廃棄物削減を企業の目的の一部として取り組むことが、どのようにして人々、地球、そして利益に利益をもたらすかを解説します。
  • 資産の追跡
    RFIDは、設備や車両、カートラック、カゴ車、工具といった資産や設備の位置や状態を把握する資産管理・追跡でも活用されています。
  • アクセスコントロール
    従業員のバッジにRFIDタグを取り付けることで、制限区域へのアクセス管理が可能になります。





パッシブRFIDタグとアクティブRFIDタグ

前述の通り、RFIDタグはRFIDテクノロジーの一部であり、モノをワイヤレスで追跡・識別するために使用されます。タグにはパッシブRFIDタグとアクティブRFIDタグの2種類あり、それぞれ利点が異なるため、どちらを選択するかはアプリケーションのニーズによって異なります。

パッシブRFIDタグ:内部に電源を持たず、RFIDリーダーからのエネルギーに依存する形でタグに電力を供給し、データを送信します。パッシブRFIDタグは最も広く使用されているRFIDタグの一種で、一般的にアクティブRFIDタグよりも安価です。パッシブRFIDタグは、小売の在庫管理や資産追跡、入退室管理などのアプリケーションで使用されています。またタグが作動している間は、リーダーからの信号さえあれば、絶えず製品固有のIDを返信できることから、製品認証用のソリューションとしても活用されています。

アクティブRFIDタグ:内部に電源(通常はバッテリー)を備えているため、パッシブRFIDタグに比べ、より長距離のデータ伝送を可能にします。アクティブRFIDタグは、サプライチェーン管理や資産追跡など、長距離の識別が必要な用途で活用されています。また一般的にパッシブRFIDタグよりも高価です。

なおRFIDタグには、2つの主要なタイプに加えて、セミパッシブRFIDタグやバッテリーアシストパッシブ(BAP)RFIDタグなど、パッシブRFIDタグとアクティブRFIDタグの特徴を併せ持ったサブタイプも開発されています。

各タイプのRFIDタグの独自の機能と利点を以下にまとめました。特定のアプリケーションに適したタイプのタグを選択する際の参考に活用下さい。

             パッシブ   アクティブ
  バッテリー    なし   あり
  読み取り距離    最大20m
  最大100m 
  メモリ機能  メモリはRFIDチップの性能に限定
 リーダーの電波に依存
 パッシブと比べ、
 より大きなメモリを搭載できる
 長距離かつセルフログデータ送信が可能
  コスト   低い   高い

パッシブRFIDタグとアクティブRFIDタグのどちらかを選択するかは、アプリケーションのニーズによって決めることができます。低コスト、小型、長期間の使用を必要とするアプリケーションにはパッシブRFIDタグが、長距離で継続的なデータ伝送を必要とするアプリケーションにはアクティブRFIDタグが適しています。なお市場で活用されているタグのほとんどはパッシブ型であることから、本ガイドではパッシブRFIDに焦点を当てています。





RFIDシステムの構成要素

ここまでRFIDテクノロジー、RFIDタグ、そしてRFIDシステムについて説明をしてきましたが、改めて整理するため、関連する用語を紹介します。

RFIDテクノロジーとは、電波を使いモノを識別・追跡するための無線テクノロジーの名称です。RFIDタグはRFIDテクノロジーの一部であり、マイクロチップとアンテナを内蔵した小さなデバイスのことを指しており、電波を使い無線でデータを送受信します。

一方、RFIDシステムには、RFIDタグだけでなく、RFIDリーダ、ホストシステム、そして物体を識別、追跡、管理するために必要なその他のコンポーネントが含まれています。RFIDシステムとは、RFIDテクノロジーを活用してビジネス上の課題を解決したり、アプリケーションの要件に対応するソリューションの総称です。

RFIDの構成要素

  • リーダー:リーダーはRFIDシステムの心臓にあたる要素です。タグを作動させるために電波を送信し、タグから返信されたデータを受信してデコードします。リーダーは通常、無線周波数(RF)モジュール、マイクロプロセッサ、およびホストシステムに接続するためのインターフェースから構成されています。
  • アンテナ: アンテナはリーダーからタグへ電波を送信し、タグから返信されたデータを受信する役割を担っています。アンテナは用途に合わせて様々な形や大きさで設計することができ、リーダーに内蔵することも、また別の部品として取り付けることも可能です。 
  • RFIDタグ:RFIDタグは追跡する個品に取り付けるRFID機能を備えたタグを指しています。RFIDタグにはマイクロチップとアンテナ(タグにもアンテナがあります。リーダのアンテナとは異なるものです)が含まれており、アイテムに関連するデータの保存と送信を行います。
  • ホストシステム:ホストシステムとは、RFIDシステムを管理・制御するソフトウェアとハードウェアのインフラストラクチャーを指します。一般的には、ソフトウェアを実行するコンピュータ、サーバー、またはクラウドベースのプラットフォームで構成され、RFIDリーダーと通信することで、RFIDタグからデータを収集します。

RFIDシステムの各構成要素は、非接触でモノの識別と追跡を可能にすることを目的として協働し、多種多様なアプリケーションのための貴重なソリューションとなっています。





RFIDの仕組み

これまでの章では、RFIDの技術、タグ、アプリケーション、そしてRFIDを使用するメリットについて多くのことを紹介してきました。次にRFIDがどのように機能するかという点を紹介します。

RFIDリーダーは、無線周波数信号をリーダー内のアンテナ部分に送信し、アンテナはその信号を周囲に向けて一斉に送信します。RFIDタグがリーダーの範囲内にある場合、リーダーの信号から生み出された電波がタグのアンテナに届くことで、タグ上のマイクロチップに電力が供給されます。マイクロチップはこのエネルギーを使って、タグに保存されているデータをリーダーに送信します。なおこの時にタグは一意の番号を応答します。

タグからリーダーへのデータ送信は一方向の通信です。リーダはタグからデータを受信し、通常マイクロプロセッサを使ってデコードします。その後、タグから送信されたデータが処理され、ホスト・システム(コンピュータ、モバイル機器、または他のタイプのシステム)に転送されます。

すでに述べたように、RFIDタグには主にパッシブ型とアクティブ型の2種類があります。パッシブタグは独自の電源を持たず、リーダから送信されるエネルギーによって作動し、データを送信する一方で、アクティブタグは独自の電源(通常はバッテリ)を持つため、リーダに近接していないときでも継続的にデータを送信することができます。

リーダとタグ間のデータ交換は高速で効率的なプロセスなので瞬時に完了します。このため、RFIDは、サプライチェーンの管理や、在庫の追跡、資産管理など、個品の迅速かつ正確な識別と追跡を必要とする用途で理想的なテクノロジーとされています。





RFID製品の種類

RFID業界は用途にあわせた様々な製品を提供しています。最も一般的な製品は、以下の通りです。

インレイとタグ(Inlays and tags) 

UHF、HF、NFCの周波数帯で動作するように設計され、識別と追跡機能を担っています。幅広い産業で一般的に活用されています。インレイとタグの違いについては後述します。

ハードタグ(Hard tags)

特定の要件を満たすように設計されたタグで、LF、HF、UHFの各周波数規格に準拠しています。主な特徴として、ほこりや化学物質、機械へのストレスに対する耐性、一時的な水没に対する保護を備えています。また用途に応じて、オンメタル機能、耐高温性、湿気や温度の感知機能を持たせることも可能です。

二重周波数タグ(Dual frequency tags)

これらのタグは2つの異なる周波数帯域で動作し、活用可能なリーダー技術に応じて2つの帯域を切り替える機能を備えています。そのため柔軟性が高く、LFとHF、またはHFとUHFの両方の技術的な利点を提供することができます。

センサータグ(Sensor tags)

センサーが内蔵されたタグで、温度、湿度、光、動きといった特定の環境条件を検出した際に、条件をリアルタイムで記録、監視、制御する機能を備えています。これにより安全性やセキュリティの強化、効率化、持続可能性の改善を実現します。

Avery DennisonはUHF、HF/NFC、LF、それぞれの周波数帯における高性能・高品質なRFID製品、業界で最も幅広い製品ラインアップを提供しています。環境への影響は最小限に抑えて製造されたRFID製品は、業界屈指の品質基準に基づいて徹底的にテストされています。ラインナップはこちらをご覧下さい。





パッシブRFID:周波数帯による比較

画像:電磁スペクトル 

パッシブRFIDタグは、前述したようにRFIDテクノロジーの重要な構成要素です。これらのタグは異なる周波数で動作し、周波数によって大きく3つのタイプに分類されます。

  • 低周波(LF)RFIDタグ:125~134kHzの周波数で作動し、読み取り範囲は10cmと比較的短いタグです。LF帯RFIDタグは、動物の識別や入退室管理などの用途で多く活用されます。
  • 高周波(HF)/ NFC近距離無線通信タグ:13.56 MHzの周波数で作動し、数十cmまでの読み取りが可能です。高周波RFIDタグは、小売店の在庫管理や資産追跡などの用途で一般的に使用されています。
  • 超高周波(UHF)RFIDタグ:868~915MHzの周波数で作動し、読み取り範囲は最大20メートルです。UHF帯RFIDタグは、より長い読み取り範囲が必要とされるサプライチェーン管理や資産追跡などの用途で一般的に使用されています。

 

画像:異なる周波数の比較


各周波数にはそれぞれ独自のメリットと制約があります。周波数の異なるメリットと制約を理解することで、特定のアプリケーションやビジネスニーズに適したタグを選択する際に役立ちます。

例えば、金属や液体の表面近くや表面上での読み取り機能が強化されているLF帯とHF帯のRFIDタグは、データの読み取り速度が比較的遅くなります。同時にRFIDタグは読み取り範囲が狭いため、遠くから読み取る必要のない用途に適しています。

一方、UHF帯RFIDタグは読み取り範囲が広く、離れた場所からタグを読み取る用途に適していますが、液体や金属による電波干渉に影響されます。なおUHF帯RFIDタグは一般的にHFタグやLFタグよりも安価です。





NFCとRFIDの違い

NFC(Near Field Communication:近距離無線通信)とRFID(Radio Frequency Identification:無線自動識別)は、いずれも無線で動作する無線通信技術です。

NFCは短距離通信プロトコルのセットを使用する特殊なサブセットです。13.56 MHzの周波数で作動します。また典型的な通信距離は2cmです。なおNFC とUHF RFID には、デバイス間でデータを伝送する機能をはじめ、いくつか類似点があり ますが、重要な相違点もあります。

 

    NFC                   UHF RFID               

 

周波数の範囲

13.56 MHz 856 MHz ~ 960 MHz
一般的な読み取り距離 4 cm 以内 

 

最大20メートル

代表的な活用例 ・製品認証
・ブランド保護
・消費者エンゲージメント
・モバイル決済
・サプライチェーンを
 通じた資産の追跡
・リアルタイムの在庫管理紛失
・盗難防止

 

リーダー

スマートフォン ハンドリーダーや固定リーダー

 

一度にスキャンする
タグの数

ひとつ 複数
タグにかかる費用 中~低 低い





RFIDインレイとRFIDタグの違い

「RFIDインレイ」と「RFIDタグ」は同じ意味で使わることが多い用語ですが、実際にはRFIDシステムの2つの異なるコンポーネントを指しています。

RFIDインレイは、RFIDタグの基本的な構成要素であり、アンテナ、マイクロチップ(タグがデータを送受信するための主要コンポーネント)、およびアンテナとチップを一緒に保持する薄い層の基材で構成されています。RFIDインレイは通常、個別の部品として製造・販売されており、紙のラベルや、プラスチックカード、値札、ファブリックラベルなど、さまざまなタグに組み込むことができます。

一方のRFIDタグは、すぐに使用できる完成品を指しており、RFIDインレイとフェースから構成されています。フェースとは、インレイを覆う薄い層のことで、透明または白色のプラスチックや紙が使用されています。それらに加え、プラスチック、PETや紙、その他同様の材料でできたチップ、アンテナ、基板を完全に包むための封止材を備えている場合もあります。RFIDタグは通常、在庫管理やトレーサビリティといった用途で使用される製品であり、多くの場合、適切な粘着剤とともに提供されます。

要するに、RFIDインレイはRFIDタグの中核部品であり、RFIDタグはすぐに使用できる完全なRFID製品です。





RFIDタグの構造

RFIDタグは通常以下の通り構成されています。

  • レイヤー1 - 粘着剤(Adhesive):粘着剤はタグを対象のアイテムに固定するためのもので、ユースケースに応じた粘着剤が使用されます。ラベルコンバーター各社が、ユースケースに適した粘着剤を特定する役割を担います。
  • レイヤー2 - 基材(Substrate):基材はアンテナとチップを保持するための薄い層を指します。
  • レイヤー3 - アンテナ(Antenna):アンテナは、インレイがデータを送受信するために必要な部品です。アンテナは通常、銅やアルミニウムなどの導電性素材でできており、特定の周波数で共振するよう設計されています。
  • レイヤー4 - マイクロチップ(Microchip):マイクロチップは集積回路(IC)とも呼ばれ、データを保存し、データの送受信に必要な処理を行います。マイクロチップは通常アンテナに搭載され、導電性トレースを介してアンテナに接続されています。
  • レイヤー5 - 表面ラミネート(Face laminate):表面ラミネートは通常、紙または白い合成フィルムでできており、RFIDタグを印刷性、湿気、ほこり、紫外線から保護し、剛性を強化します。 
  • レイヤー6 - 封止材(Encapsulation):封止材は、タグの背面に使われ、湿気やほこりなどの環境要因によるインレイの損傷を防ぎます。封止材には、エポキシ樹脂やその他の樹脂などの材料が含まれており、通常、基材とアンテナを取り付けた後にインレイに塗布されます。



画像:RFIDタグの構造



RFIDインレイとタグのさまざまな納品形態

RFIDインレイとRFIDタグにはさまざまな形態があります。

  • ドライインレイ(Dry inlay):ドライインレイは、バッキング材や粘着剤が塗布されていないRFIDインレイです。このタイプのインレイは、パレットや箱などの製品に組み込む必要がある用途でよく使用されます。
  • ウェットインレイ(Wet inlay):ウェットインレイは、バッキング材と粘着剤が塗布されたRFIDインレイです。バッキング材と粘着剤は、インレイの保護と接着の役割を担います。このタイプのインレイは、インレイを表面に貼り付ける必要がある用途でよく使用されます。
  • タグ(Tag):タグには、ラベル/ステッカーと下げ札があります。ラベル/ステッカーはRFIDインレイの一種で、紙または白色プラスチックの面にあらかじめ封入されており、バーコードや製品情報などの追加情報を追加するための印刷可能な表面になります。

ドライインレイ、ウェットインレイ、タグの違いは、主にその使用目的です。ドライインレイは製品への組み込みを目的とし、ウェットインレイは表面への取り付けを目的とし、タグは取り付けと情報印刷の両方の目的に使用されます。

 





適切なRFIDインレイとタグを選ぶコツ

要件に適したRFIDインレイとタグを選択するのは難しい作業です。当社のプロダクトファインダーは出発点として有用であり、当社の営業およびカスタマーチームが喜んでお手伝いします。一般的に、RFIDインレイとタグの要件は、最終的にはターゲットとするアプリケーションとユースケースによって決まります。したがって、適切なRFIDインレイとタグを選択する際には、以下の質問を考慮することが重要です。

  1. その製品は何でできていますか?(例:ガラス、プラスチック、金属)
  2. タグはどこに付けますか?(例:注射器の上、フラッグ、キャップの上)
  3. 製品は何らかの特別なプロセスを経ますか?(例:滅菌、極端な高温など)
  4. RFIDインレイはどのように読み取られますか?(ハンディリーダーか固定リーダーかなど)

また選定プロセスには、以下のような他の要因も影響することを念頭に置くことが重要です:

  • 周波数(Frequency):アプリケーションに最も適した周波数帯を決定します。最も一般的な周波数帯は、低周波(LF)、高周波(HF)、超高周波(UHF)です。
  • 使用環境(Operating environment):温度、湿度、物理的要素、化学的要素への露出など、RFIDタグが使用される動作環境を考慮します。これにより、その条件に最適なタグとインレイのタイプを決定することができます。
  • タグの仕様(Tag form factor):用途に適したタグの仕様を選びます。円形、正方形、長方形など様々な形やサイズがありますが、一般的にインレイが大きいほどアンテナが大きくなり、RF性能が向上しますが、タグサイズも大きくなります。
  • 読み取り範囲 (Read range):読み取り範囲とは、RFIDリーダーが情報をタグから正常に読み取ることができる距離を指します。用途に適した読み取り範囲を正しく認識することが大切です。
  • データの保存容量(Data storage capacity):タグに保存するデータ量を考慮することが重要です。なおRFIDタグのデータ保存容量は、インレイの種類やチップによって異なります。
  • コスト(Cost):RFIDタグの予算は、タグ1枚あたりのコストに必要なタグの数量を乗じることで算出できます。
  • セキュリティ(Security):タグに保存されるデータの暗号化やパスワード保護の必要性など、用途に応じたセキュリティ要件を考慮しましょう。
  • 集積回路(The integrated circuit / IC):ICはタグの「頭脳」です。タグとリーダー間の通信を制御するだけでなく、データの保存と処理を担います。

用途に適したICを選ぶには、以下の点を考慮することが重要です。

  • メモリ容量(Memory capacity):データを保存する上で必要になるメモリ容量を決定します。大量のデータを保存する必要がある場合は、メモリ容量が大きいICを選ぶ必要があります。
  • 読み取り範囲(Read range):ICの性能によって読み取り範囲が異なります。より遠くのタグを読み取る必要がある場合は、よりセンシティビティが高いICを選択する必要があります。
  • セキュリティ(Security):ICの中には、タグに保存されたデータを保護するため、暗号化などのセキュリティ機能を搭載しているものがあります。セキュリティが懸念事項である場合はそのようなセキュリティ機能を備えたICを選択する必要があります。
  • コスト(Cost):より大きなメモリー容量、より広い読み取り範囲、より強固なセキュリティー機能を持つICはより高価になるため、予算に応じたICを選択しましょう。

以上の要点を押さえることで、適切なメモリ容量、読み取り範囲、セキュリティ、コストのICを選択することができます。

 





RFIDとバーコードの比較

             バーコード     RFID 
 データストレージ   限られたデータ量    大きなデータ量 
 読み取り方法   直接スキャンする必要がある     離れていても読み取ることができる         
 可視性   直接見えている必要がある   見えていなくとも読取りができる  
  精度   オペレーションに依存   より高い精度
  セキュリティ   簡単にコピーできる   より安全で複製が困難

RFIDテクノロジーを議論するときには必ずといっていいほど「バーコード」に議題が及びます。RFIDとバーコードはどちらもモノの識別とデータ取得に活用されていますが、両者にはいくつかの重要な違いがあります

  • データの容量(Data storage):RFIDタグは、製品の情報や製造の詳細、さらには来歴に関する情報など、バーコードに比べてより多くのデータを保存することができます。
  • 読み取り方法(Reading technology):バーコードは、データを読み取るためにスキャナを物理的にバーコードに近づける必要がありますが、RFIDタグは離れたところから読み取ることができるため、大量のデータをより速く、そして効率的に処理することが可能です。
  • 可視性(Line of sight):バーコードスキャニングは、スキャナとバーコードの間に遮蔽物がある場合、読み取りができません。一方のRFIDタグは見えていなかったり、箱の中に入っている状態でも読み取ることができます。
  • 精度(Accuracy):RFIDシステムは、一度に多数のタグを読み取ることができます。またスタッフのオペレーションに依存しないため、一般的にバーコードシステムよりも高い精度を実現します。
  • セキュリティ(Security):バーコードは簡単にコピーされたり偽造される可能性がありますが、RFIDタグは一般的に安全性が高く、また複製が困難であるため、セキュリティに注意が必要な用途での活用に適しています。

 





RFIDとサステナビリティ

近年、技術や製品がサステナビリティや環境に与える影響に注目が集まっていますが、RFIDテクノロジーも例外ではなく、よりサステナブルな未来に貢献する可能性があると評価されています。このセクションでは、材料や製造プロセス、および使用済み製品のリサイクルといった領域における可能性や影響、サステナビリティにおけるRFIDの役割をご紹介します。

  • 材料:RFIDテクノロジーがサステナビリティに貢献できる重要な分野の一つは、RFIDが使用する材料です。環境関連団体に認証された素材やリサイクル素材の使用を増やし、PETのような持続可能性の低い素材を使わないようにすることで、RFID製品自体のカーボンフットプリントを削減できるように留意することが必要です。さらにRFIDテクノロジーを活用すれば、サプライチェーンにおける管理と可視性の向上を通して、無駄を削減し、効率を改善することができます。
  • 製造:RFIDは、その製造工程でもサステナビリティに配慮する必要があります。活用できる最良のプロセスを導入し、サプライチェーンを管理することで、RFID製品のカーボンフットプリントを削減し、製造プロセスの全体的なサステナビリティを向上させることができます。
  • 製品の寿命:使用済み製品のリサイクルといった観点でも、RFIDテクノロジーはサステナビリティに寄与します。リサイクルチェーンの可視化を通して、使用済み製品の管理を改善し、廃棄物を削減することができます。また、RFIDタグとインレイ自体のリサイクル性も重要な事項です。
  • カーボンフットプリントの測定:RFIDとIoTソリューションを活用することで、製品のライフサイクル全体を通したデータをトレース・収集し、個品ごとのカーボンフットプリントを測定することができます。測定されたカーボンフットプリントには、材料の調達や製造過程でのエネルギー消費、商品の輸送、使用後の廃棄に関するデータを含めることもできます。これらの情報を収集することで、サプライチェーン全体のカーボンフットプリントを算出し、改善すべき分野を特定することが可能です。

    MONOist「製品1個単位でCO2排出量が見えるように、RFIDが原材料から売り場までトレース 」では、RFIDを活用したCO2排出量の見える化が紹介されています。

 





RFID規格・標準化団体

RFID標準は、業界固有の組織によって国、地域、もしくは世界レベルで管理されており、異なるRFIDシステム間の互換性と相互運用性を確保するため、複数のRFID標準が存在します。最も一般的な規格や標準化団体は次の通りです。

ISO/IEC 18000


パッシブUHF帯RFIDのエアインターフェースプロトコルの仕様を含む、物品管理におけるRFIDの国際標準規格です。

EPCglobal 


サプライチェーン管理とアイテムレベルの識別を目的としたRFID標準の開発を専門とする世界的な組織です。

GS1


製品の識別や追跡、サプライチェーン管理を目的としたバーコードとRFID技術の活用を管理する世界的な組織です。

RAIN RFID


アイテムレベルの識別と追跡を目的としたUHF RFIDテクノロジーの活用を推進する世界的な組織です。

NFC Forum


近距離無線通信(NFC)テクノロジーの活用を促進する非営利の業界団体で、NFCテクノロジーの活用に関するさまざまな仕様やガイドラインを策定しています。これらの仕様により、NFC機器やアプリケーションの相互運用性、安全性、信頼性が担保されています。

これらの規格や標準化団体によって、異なるメーカーのRFIDシステムやタグがシームレスに連携し、サプライチェーン管理や在庫管理、アクセスの制御や消費者の参加に至るまで、さまざまな用途での使用が可能になっています。





RFIDとIoTソリューション

RFIDとIoT(モノのインターネット)は、シームレスな方法でお互いを補完し合う存在です。RFIDテクノロジーが対象物を一意に識別し、そのライフスタイルと通した来歴を追跡する手段を提供する一方で、IoTソリューションはこれらの対象物とデジタル上で接続する方法を提供しています。この補完関係によって、対象物と他のデバイス間のデータ伝送と交換が実現し、データをリアルタイムで収集、保存、分析、活用できるスマートな接続システムの構築へと繋がっています。

RFIDタグを商品や製品に取り付けてその動きをトラッキングし、タグから得られたデータを追加のセンサーデータと組み合わせて、リアルタイムのモニタリングや分析を行うことができます。これによって、サプライチェーン全体の最適化、在庫レベルの適正化、設備や資産の状態のモニタリングなど、多くの利点を実現することができます。