在庫データ精度の平均は76%、ゴーストストック率の平均は8%
マテリアルサイエンスとデジタルIDソリューションのグローバル企業であるAvery Dennison Corporation (NYSE:AVY、 所在地:オハイオ州メンター、 エイブリィ・デニソン、 以下 Avery Dennison)は、日系小売企業12社計66店舗の棚卸データを用いて、日本の小売業における在庫管理の課題を独自に分析し、提言をまとめたガイドブック『その商品は今どこに?在庫データの不正確さがもたらす見えないコスト』を本日公開しました。
■本ガイドブック公開の背景
コロナ禍を経て、消費者は店舗、EC、モバイルアプリな どを自由に行き来し、いつでも好きな方法で買い物ができることを期待するようになりました。こうした消費者のニーズに対応するため、小売企業各社はあらゆる販売チャネルをシームレスに統合するオムニチャネル化を推進しています。そのため、小売企業が各チャネルにおける在庫データ精度を向上させ、リアルタイムに在庫情報を更新できる仕組みを構築することは、売上を拡大するチャンスにつながります。
■棚卸しデータ分析結果
一方で、小売店舗では期末の棚卸資産を確定するために棚卸が行われ、帳簿在庫と実在庫の金額の合計の差分を [ロス率] として評価しますが、その際に、帳簿よりも多い在庫と少ない在庫は相殺されるため、問題が過小評価されがちになります。しかし、「逆ロス」や「SKUごとの在庫データの精度」といった異なる視点から見た場合、見過ごすことのできない大きな問題が浮き上がってきます。
- 問題がないと見られていたロス率が、実は実在庫数が帳簿在庫数よりも多い逆ロスによって相殺され、巨額のロスを隠していた
- 実在しない在庫が、在庫管理システムまたは帳簿上だけであたかも在庫が存在しているように計上される「ゴーストストック」が発生し、その結果、補充が行われず、 欠品状態が続く状況を作り出していた
本ガイドブックでは、これら指標の考え方や計算方法、また改善方法についても言及し、店舗の在庫データを正しく保持したいと考える小売企業の担当者とって有益なガイドブックとなっています。なお12社計66店舗の棚卸データの分析から分かった注目すべき数字は以下の通りです。
- 帳簿在庫数と実在庫数が合致するSKUの割合を示す在庫データ精度。12社の平均は76%。うち6社は 70% を下回る結果に
- 帳簿上では「在庫がある」ものの、実際には「在庫がない」状態のSKUの割合を示すゴーストストック率の12社の平均は 8%
- ゴーストストック率がおよそ 2% 改善すると、売上がおよそ 1% 増加するという相関関係が明らかに
■識者コメント
オイシックス・ラ・大地 COCO / 株式会社顧客時間共同CEO 取締役 奥谷 孝司 氏
「正確な在庫データは現代の小売業が抱える2つの課題解決に寄与します。1つ目は顧客体験の向上です。デジタル時代の買物体験においてオンライン上の商品情報の正確性は必要不可欠です。在庫情報が売上に寄与することは本レポートが証明しています。オンラインとオフラインを行き来して買物をするのが当たり前の時代。皆さんの大切な商品の情報整備が買物体験価値を高める時代なのです。2つ目は店舗スタッフの生産性と働き甲斐向上です。近年海外の小売業では従業員アプリの導入が盛んです。その目的には柔軟な勤怠・タスク管理や従業員教育がありますが、商品・顧客情報の店舗スタッフへの提供もあります。正確な在庫データを接客の武器として使える店舗スタッフは、自信を持ってデジタル時代の顧客と向き合うことができます。『商品在庫の有無』は当たり前ですが、顧客はもちろん、店舗スタッフにとっても購買意思決定の重要ポイント。このペインの解消が実現すれば、生産性の高い店舗運営の実現と店舗スタッフのやる気の向上が見込めます。またこれらの実現にはRFIDが有効です。今後商品のトレーサビリティの把握から、販売後の商品保証にも活用されることでしょう。皆さんが真心込めて製造された商品を正確に管理し、デジタル時代のお客様にお届けするという商売の基本を極めるために、リアルタイムでの在庫の可視性をもたらすRFIDは大きな武器となるのです」
Avery Dennison Smartrac マネージングディレクター 加藤順也
「在庫管理の正しさを会計の視点のみで評価する小売企業では、そもそも在庫管理をするためのデータは正しいのか、という実務上の課題の有無を見落としてしまいます。特にデジタル化やAI化を進める小売企業においては、在庫データが間違っているために失われる機会損失は大きく、また在庫の『ズレ』の原因を特定することは困難なため、『ズレてしまった在庫データはどのようにすれば効率的に正しく修正できるのか』を早急に検討する必要があるでしょう」